社内文化をオフィスデザインに応用したら、社員の働きやすさが150%改善したよ
※本記事は2019年11月に執筆した記事です。
こんにちは。うえんつと申します。
このたび、2019年8月1日付でRELATIONSは渋谷から外苑前へ移転しました。実は渋谷の前のオフィスは外苑前だったので、場所は違いますが戻ってきたような形になります。オフィスの規模も渋谷では300坪でしたが、新しいオフィスの広さは130坪程度と半分以下になりました。RELATIONSではこれまでオフィス移転を4回しており、私が関わるのは今回で2回目になります。
今回は、なぜ手間とコストをかけてまで移転する判断をしたのか、なぜ元よりも狭いオフィスに移転することになったのか、その結果どうなったのかをご紹介しようと思います。
結論だけ先にお伝えすると、オフィスでの働きやすさの社員満足度は、移転前の約62%から移転後は約95%となり、前回比で約150%改善しました。この移転事例が、みなさまにとっての「ええ会社をつくる」参考になれば幸いです。
ちなみに、この活動の成果が認められて会社のMVP(めっちゃバリューパーソン)に選ばれました。
◯ RELATIONSの特徴
社員数:49名
創業:2009年
所在地:東京都港区北青山
主な事業:コスト改善コンサルティング・WEBメディア・組織マネジメントSaaS
事業範囲:日本全域
平均年齢:32.3歳
男女比:5対1
(2019年9月現在)
弊社では、全体の3分の2ほどを営業・コンサルタントがしめています。なかでも、コスト改善コンサルティング事業部のメンバーは全国各地に出張していることが多く、全社会議がある月曜以外の平日は、オフィスにいるメンバーが少ないのが特徴です。
また、営業・コンサルタントに限らず全社的にリモートワークが許容されているので、平日でも出社する社員が10人程度という日もあります。
◯ 移転の目的
今回移転する目的として、RELATIONSが解決したい課題は以下の2点がありました。
1. オフィスでのコミュニケーションや働きやすさの向上
従業員数に対してあまりに広すぎるオフィスでは、物理的な距離がコミュニケーションを取りづらくさせていたり、会話が届きづらく閑散とした雰囲気になってしまったり、働く上でのパフォーマンスに支障が出始めていました。また、駅からオフィスまでの距離がやや離れており、周辺環境なども業務への支障となる要因がいくつかありました。
2. 設備の使いやすさや機能信頼性の向上
常日頃、営業・コンサルのメンバーが資料を作成したり、エンジニアがWeb開発していたりするので、複合機やインターネットの調子が悪かったり、会議室のモニターやプロジェクターといった設備の使い勝手が悪かったりすると、直ちに業務に支障が出てしまいます。
以前は、特にネットワークの接続性が致命的でした。ネットワーク機器が古く自席から会議室などへの移動中にアクセスポイントから遠ざかると再接続がうまくいかなかったり、つながっても速度が遅かったりといった不具合が多発していました。
これらの課題は日常的に不満の声として上がっており、それを解決するためにオフィス改善プロジェクトが立ち上がりましたが、1年ほどかけて検証を行った結果、最終的に移転することに決まりました。
◯ 移転のコンセプト
今回の移転では、会社のミッションである「ええ会社をつくる」を実現するために、社内文化を言語化した「GOCHI(ごち)」というコンセプトでオフィスづくりに取り組みました。
今回なぜこの「GOCHI」をコンセプトにしたのか、また「GOCHI」がどのように生まれ、どのようにデザインとして表現されたのかを紹介します。
そもそも「GOCHI」は、社内ルールである「ゴチ制度」にも使われている言葉で、制度としては社員同士で食事をした場合、会社が食事代金の一部を負担するというものです。メンバー同士のコミュニケーションを活性化させることを目的として運用されています。
(ゴチの写真は社内で共有されます。このときは名古屋がテーマでした)
「GOCHI」ということば自体は、創業して2年目くらいに、デザイン思考研修の中で生まれた「互知(ごち)」というアイデアが元になっています。これは「お互いに分かり合う」という意味で、当時の日報によると、事業部を越えて社員間でのコミュニケーションを活性化することを目的とした制度だったようです。始まった当時は、一定期間ごとにペアを組んで、互いの業務内容や所感をヒアリングし、日報を書きあっていたそうです。
この「互知」はプロトタイプとして運用していたこともあり、この6年くらいで様々な形に変えながらブラッシュアップされ、現在の「ゴチ制度」として生き続けています。
その過程で、社内コミュニケーションの施策が発展し、今では全社的に「1on1」を行っていたり、「Crewbook」という自己紹介のドキュメントを社員間で共有したり、夏の社員合宿では焚き火を囲んでプレゼント交換をすると行ったユニークな取り組みも生まれており、「互知」が文化として浸透しています。
(3年前の社員合宿でキャンプに行った時の一枚。
焚き火を囲んでプレゼント交換をした)
今回のオフィスデザインのコンセプトとして「互知」に着目した理由はまさに、前述の「オフィスでのコミュニケーションや働きやすさの改善」を実現するための行動指針、または判断基準とすることで、より多くの「互知」を生み出すための仕掛けをアウトプットできるイメージがあったからです。
そのために、まずは「互知」を言葉以外で表すとどういうことかというところから深堀りし、互知のイメージを確立してからオフィスとしてのアウトプットに活かす、というプロセスで取り組みをはじめました。
今回オフィスデザイン会社さんとの打合せでは、様々なオフィスや家具のレイアウトが並べられた膨大な数の資料を用意していただき、どういうものがどういうふうに「互知」っぽいかを、社員にヒアリングしながらスクリーニングしていきました。
(スクリーニングやヒアリングから導き出された「互知」のイメージ)
▼スクリーニングの結果
互知っぽいもの
・可動式のテーブルやイス(場面に合わせて自由に組み合わせられるので人を集めやすい)
・ガラス張りの壁、低い壁や低い背の椅子(オープンな感じがする。顔が見える)
・バーカウンターや大きいダイニングテーブル(コミュニケーションが生まれそう)
・卓球やバスケなどのスポーツ(コミュニケーションの手段だから)
・木の感じ、暖色系、焚き火(人の温かみを感じる)
互知っぽくないもの
・背中合わせになる席の配置(お互いの顔が見えないから)
・間隔の広い席(お互いの物理的な距離が空きすぎるとコミュニケーションが減る)
・刺激の強い奇抜なデザイン(コミュニケーションに集中できない)
・コンクリートやモルタル塗り(冷たい印象、人の顔が冷たく見える)
(互知を促す仕組みのスクリーニング)
それらの結果をオフィスデザイン会社さんに共有し最終的に残ったイメージとして、「人が主体であり、焚き火を囲むようにみんながひとつのものに向かい、常にどこかでオープンなコミュニケーションが生まれ、お互いの顔が見える距離で仕事ができる状態」を目指しました。
その結果、物件の特徴でもある中央の螺旋階段を「焚き火」に見立てて、階段を中心に広がって行くようなレイアウトのオフィスデザインになりました。
螺旋階段の周りには円形のバーカウンターを設置しました。バーカウンターに飲み物やおやつを常備しておくことで、それを取りに来るときにちょっとしたコミュニケーションが生まれやすくしたり、そこで仕事をしている人と立ち寄った人が同じ目線になり、コミュニケーションが生まれやすくなるように設計されています。
また、低い背の椅子やテーブルを配置し、極力壁を建てずに会議室の壁をガラスにすることで、誰とでもお互いの顔が見えるようにしています。これは、社内ルールでもある「情報のオープン化」を体現し、誰とでもオープンなコミュニケーションができるように配慮しています。
また弊社は、大小様々な事業部が存在しコミュニケーションの規模も日によって変化するので、テーブルや椅子は可動式にしました。テーブルを組み合わせながら大きな島・小さな島をつくり、そのときに一番コミュニケーションが取りやすい状態をつくることができます。
ちなみに、このオフィスはメゾネット構造になっており、上の階には個室の会議室や、小規模のセミナーが開催できるスペース、そしてより集中して作業がしやすい個別ブースといった、下の階よりもフォーカスされた機能のスペースになっています。
(実際に出来上がったオフィス。右上に少し見えているのが集中ブース。
社内の様子やスペースの詳しい紹介はこちら)
移転してすぐ実際に使ってみた社員の声としては、
・天井が高くて開放感がすごい
・誰がいるかすぐわかり、メンバー同士の会話が増えた
・雰囲気が明るくなって、息が吸いやすくなった
・入った瞬間に「こんにちは」という挨拶があり、働いている様子も見えるので、良い
といった感想が寄せられました。コミュニケーションのとりやすさが体感で変わったと感じる社員が多く、具体的に何が変化したことでそのように感じるかを分析するために、もう一度アンケートを実施して、前のオフィスからの改善点を移転の結果として可視化しました。
◯ 移転の結果
移転プロジェクトがちょうど始まった1年前と、移転してから2ヶ月ほど経過したタイミングの2回にわけて、全社員を対象としたアンケート調査を実施しました。
(今回アンケートに協力してもらった社員の割合)
今回は、オフィスでのコミュニケーション・働きやすさと、設備の使いやすさ・安定性の効果を検証するため、以下の4つの軸で調査しました。以下はその集計結果です。
結論としては、リフレッシュのしやすさ以外の項目で約1.3〜2倍程度、満足度が改善するという結果となりました。次に、各項目ごとにどういうことをしたのか、それによって組織や社員にどういう変化があったのか、内訳を見ていきます。
▼オフィスでの働きやすさについて
オフィス移転の目的の「働きやすさの改善」でいうと、
・駅までの距離:10分→3分に改善
・一人あたりの専有面積:6坪→2.6坪(月曜日の全員出社時)、15坪→6坪(月曜以外の平日)
・周辺に神宮球場や公園もあり、緑が増えた
・メゾネットタイプの珍しい物件で、天井高が2階分あり開放感がある
という声がありました。
また、オフィスで過ごす時間が1年前と比べて変化していることがわかります。1年前は7時間未満が一番多かったですが、今は5時間未満のメンバーが増えました。これは、リモートワーク推奨月間などを通じて全社的にリモートワークが普及したことで、オフィス以外での多様な働き方が浸透してきた結果かなと思っています。
前のオフィスでも、働きやすいと思っている人は多かったのですが、今回の移転で働きやすいと思った人がより増えました。事前の調査で課題とされていた「駅までの距離」が改善されたことが、最も大きい要因だと思います。
コミュニケーションの点でいうと、18時を過ぎてからビールやおつまみを出して、バーカウンターで仕事をしているメンバーのところに人が集まり、ゆるーい飲み会となってさらに人が集まってくるといった、「互知」が連鎖していく光景もよく見るようになりました。
(バーカウンターに人が集まっているイメージ。
これは移転パーティのときの一枚)
▼ 執務スペースの使いやすさについて
移転前のオフィスはアンケートをやった時点で「人数のわりに広すぎて寂しい」「孤独感がある」などの意見があり、「もっとぎゅっと」という施策によって改善したことがあります。
その事例をもとに、社員数に対して適正な広さであり、かつ今後事業が拡大して人数が増えていっても耐えうる広さを計算した結果が120~150坪となったため、今回その条件にあう物件を検討しました。その結果アンケートでは、「ちょうどよい」広さだと感じる社員が増えました。
集中できるかどうかは、前回の結果と同水準で、一定数の集中しづらい人がいるようです。少なくとも、今回の移転で集中できない人が増えなかったことは評価できるポイントで、今後の改善で「そう思う」という人を増やしていきたいと思います。
1年前にアンケートを取った時の執務エリアの設備に対する不満として多く挙がっていたのは「Wi-Fiが繋がりづらい」というものでした。RELATIONSは出張メンバーも多く、社内や取引先とのやり取りは必然的にオンラインになることが多いので、PCのネット環境は業務上の生命線となっています。
基本的に社員はMacを支給されているので、執務スペースから会議室への移動中にWi-Fiのアクセスポイントとの接続が切れてしまうこともパフォーマンスを下げる要因の一つになっていました。そこで今回は、Macのローミングに対応したWi-Fiのモジュールを導入したことで、長距離間の移動でも切断されづらくなり、結果的に満足度の向上につながったと思います。
▼ 打合せ・会議室の使いやすさ、リフレッシュのしやすさについて
リフレッシュのしやすさにおいては、前のオフィスには「人をダメにするソファ」を置いたリラックススペースがありましたが、それがなくなってしまったり、スペースが限定されたことで自由に使えるエリアがかなり減ってしまったことが大きな要因だと思います。
一方で、アンケート上ではもともとのリラックススペースを使いづらいという人も一定数いたため、今回は全員が使いやすいスペースづくりを優先して、リラックススペースは各自リモートワークなどを活用して働きやすい環境を見つけてもらおうという判断をしました。
今よりベストに近づけるためには、オフィスを増床したり、オフィス内に余白を残している部分でなにか施策が打てないかなと考えているところです。
最後に、これからオフィスを改善していく上でUXを定量的に評価するためのいち指標としてNPSを計測しました。NPSについてはこちらに詳しい解説があります。
批判者(0〜6の回答者)は回答者全体の15.8%ほどで、推奨者は31.6%でした。結果としてNPSのスコアでいうと15.79でした。
今後このスコアを定点観測することで、オフィスの改善結果を測る指標として、あるいは社内エンゲージメントの評価と連動して社内状況がオフィスでの働きやすさに与える影響など様々な検証に活用していきます。
それによってオフィスがコンセプト通りに運用されているか、オフィス以外の場所に比べて働きやすさが向上しているかどうかなどを定量的に評価していくことが重要だと思っています。この辺りもアップデートがあれば、またご報告できればと思います。
今後も定期的にアンケートとフィードバックを実施をして、振り返りのサイクルを回しながら、「日本一ええ会社」のオフィスを目指していこうと思います。
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