見出し画像

顧客事例の定量・定性データから読み解く、心理的安全性を高める「チームビルディング」の秘訣

こんにちは、RELATIONS広報の斉藤です。
皆さんの会社では、チームビルディングに対してどのような施策を打っていますか?
「複数名の社員が関わるプロジェクトで大きな成果を出すためには、土台となる”チームの関係性”が大切。そう理解はしていても、チームビルディングって効果を感じにくいし、なかなか上手く機能する感覚がない…」という悩みを耳にすることも多いです。

そこで今回は、RELATIONSがお客様に提供したチームビルディングの事例をもとに、定量・定性的な変化をご紹介します。また、そこから見える社員間の心理的安全性を本質的に高める「チームビルディング」の秘訣をお話したいと思います。

① そもそも、チームビルディングが機能しにくいワケ

人的資本経営やD&Iが注目を浴びる昨今、チームビルディングなどの人材開発施策に力を入れようと考える企業も増えてきています。しかし企業に依っては、”上手く機能しにくい要因”が複合的に存在している可能性もあります。以下はその一例です。

■お金と時間の投資を敬遠してしまいがち
人材不足などで、人材開発にお金や工数を割くこと自体が難しい。もしくは効果をすぐには測りにくいとなると、予算を通すことが難しく敬遠してしまう。
■ティーチング型以外の研修経験がない
これまで、講義形式のリーダー研修やマネジメント研修など、ティーチングの学びが多い。主体的に社員が参加するタイプの研修を実施したことがなく、イメージが湧かない。参加意欲を湧かせることが難しい。
■異動が多い
半年に1回ほど人事異動があり、チーム編成が頻繁に変わる。一度実施できたとしても継続が難しい。
■チーム全員で集まることが難しい
特に店舗運営ビジネスの場合、チーム全員が集まることが物理的に難しい。店舗でフォローし合う仕組みをつくらないと実施が困難。

そのようなハードルを乗り越えてでも、チームビルディングに取り組む意義とは・・・?

② チームの心理的安全性が高まると何が良いのか?

「チームの関係性が悪いよりは良いほうが、そりゃ良いに決まっているよね。でもそれが成果にどうつながるの?」

結論はズバリ、「関係性の質」を高めることこそが、
結果的に「思考→行動→成果の質」につながるからです。

職場で起きがちな関係性の例え話をしてみます。
ある部下が、関係性の良くない上司から居酒屋の予約を頼まれたとしましょう。上司から「お店の予約、取っておいて」と言われた場合、まず部下は「なんでこの人は俺に頼んでくるんだろう?面倒臭いな…」とマイナスな感情を抱き、思考の質が下がります。そして部下は思い出します。「そういえば、1ヶ月前も同じこと言われたな…。うーん、前と同じ店でいいや…」と行動の質が下がります。すると後日 、「なんでお前、またあの店にしたんだよ!気が利かないな」と上司から文句を言われ、結果の質が下がります。部下側からすると「いやいやいや、あなたが予約を取れって言ったから取ったんじゃん!」と不満が生まれ、さらに関係性の質が悪化します。そのようにしてバッドサイクルが生まれます。

しかし、もし彼らが普段から良好な関係性であればどうなっていたでしょう?
同じように「お店、取っておいて」と頼まれた場合、「そういえば上司は最近イタリアンにハマっているって言っていたな」と部下は上司のことを想い、思考の質が変わります。そして、「そうだ!イタリアンだったら、同僚の□□さんが詳しいって言ってたから、オススメのお店を聞いてみよう」と上司の期待を上回ろうとして行動の質が変わります。後日、上司から「あのお店、すごく良かったよ〜!」とフィードバックをもらい、結果の質が変わります。部下も「ですよね!喜んでもらえて嬉しいです!」と今まで以上に関係性の質が高まります。そのようにしてグッドサイクルが生まれます。

これは単純でわかりやすい例ですが、関係性の質が発端となり、結果に差が生まれることは日常のなかでも起きているのだとイメージしていただけたと思います。
このように、関係性の質からアプローチを行い、グッドサイクルの流れを生む手法を『成功循環モデル』と呼びます。

ダニエル・キム提唱『組織の成功循環モデル』

RELATIONSでは、「成果にこだわるからこそ関係性から取り組む」ことを常に意識して動くようにしています。

③ チームビルディングの流れ(一例)

では、チームビルディングはどのようなコンテンツを、どのような流れで行うのが理想なのでしょうか。
その答えは一つではありません。会社やチームの状況、企業文化、かけられる期間や予算、目的や求めるゴールに依って最適なコンテンツは異なるためです。
ここでは一例として、RELATIONSが推奨したい5日間のチームビルディングワークの概要を少しご紹介したいと思います。
(実際に、店舗型ビジネスを展開する弊社のお客様に提供したものです。このお客様の場合は、会社のミッション実現の土台をつくることを最上段のゴールに置いた上で、「社員の皆さんが”この会社にいて良かった”と感じる組織をつくるために、店舗内の関係性の醸成すること」を目的としていました。)

チームビルディング・コンテンツの推奨一例
■Day1
(4時間)
 チームビルディングの文脈設定
 身体を使った「伝える・深く聴く」ワーク
 相手/自分の感情や願いに目を向けるワーク
■Day2(4時間、Day1の1ヶ月後)
   感情を扱うワーク
   ライフラインワーク
■Day3(4時間、Day2の1ヶ月後)
 感情を扱うワーク
 お互いの役職共有ワーク
 インタビュー/役職体験ワーク
■Day4 (4時間、Day3の1ヶ月後)
 チームの未来を考えるワーク
 チームの約束事・スローガンを決める
■Day5(4時間、Day4の1ヶ月後)
 各回の振り返り・学びの回収
 個人の宣言ワーク
 感謝のワーク

全体的にレクチャーの時間は少なく、ほとんどの時間は参加型のワークを行います。

これらのワークを店舗の社員全員が集まり、約1ヶ月に一度のペースで実施し、約半年かけてチームの状態を徐々に引き上げていくことを目指しました。(各店舗のチームビルディング実施日は、別の店舗スタッフが店舗運営をフォローするという体制を整えて実施されました。)

④ 心理的安全性に関する、定量・定性データの推移

実際にチームビルディングのワークの効果はどうだったのでしょうか。
「効果が見えにくい」と思われがちなチームビルディングですが、今回はお客様先の2チーム(各15~20名弱のチーム)で起きた変化について具体的にご紹介します。

【定量データの推移】

Day1、Day3、Day5の後に、心理的安全性に関するRELATIONSの独自アンケートを取ったところ、2店舗ともに数値が上昇しました。

RELATIONS独自製作の「心理的安全性アンケート」
2店舗の回答結果推移

このアンケートでは、20の設問から「日常のミーティングでの発言のしやすさ」を測定し、判定しています。一般的な企業では判定「F~G」が標準的であり、0点以上の企業は上位に位置します。

アンケート結果の判定基準。
5回のチームビルディングを通して、
2店舗ともE判定からD判定に上昇しました。

各店舗ごとの変化の詳細は以下のとおりでした。

  • [A店]

    • 全体として元々心理的安全性が、一般的な企業の平均より若干高い状況から、さらに向上しました。

    • とくに「会議への集中度」「言づらいテーマの話しやすさ」「互いのフィードバックのしやすさ」の3点において、スコアが向上しました。

  • [B店]

    • 一般的な企業の平均的な状況から、平均より高い数値に上がりました。

    • とくに「発言者の分散度」「会議への集中度」「話題の自分事化」「互いのフィードバックのしやすさ」「心のこもった挨拶」の5点において、スコアが向上しています。

また、同様のチームビルディングを実施した別の店舗では、従来計測していたwevoxのエンゲージメントスコアにおいても変化が見られました。とくに「仕事仲間との関係」のほか、「仕事のやりがい」といった意欲や、「サービスへの誇り」「ミッション・ビジョンへの共感」といった会社への愛着感を表す項目の数値が、チームビルディング前に比べて最大4ポイントほど上昇しました。

チームビルディングの様子

【定性データの推移】

いずれの店舗においても変化を感じていただいていたのですが、特に店舗全体での変化が印象的だったA店についてご紹介します。

■店舗マネージャー2名の変化

これまで社員に対して「このくらいのレベルはできて当たり前だろ」という決めつけた考え方や、自分のなかの基準に満たないものは「ダメなもの」だと捉えていた”自分の思考の癖”を認知しました。
自分たちマネージャーの影響もあり、もしかするとチーム全体に”人を否定するような思考や言動”が蔓延していたかもしれない…と振り返ることができました。
今では社員一人ひとりにこだわりがあるのだと理解し、相手のことを知りたいならまずは自分から自己開示をしようと意識して行動するようになっています。

マネージャー2名へのインタビューより抜粋

■チーフ・一般社員の変化

・チーフの動き方が変わりました。これまでは実務に追われて集中しがちだったのですが、意識して周りに目を配り、社員たちに声を掛ける回数が増えたなと感じます。積極的にリーダーシップを取ろうとしています。

・単なる質問や確認ではなく、「もっとこうしたほうがいいと思うのですが、どう思いますか?」という聞き方に変わったなと感じます。

・休憩中や、開店前・閉店後にメンバー同士が雑談している姿を見る機会が増えました。

社員アンケート、マネージャーへのインタビューより抜粋

■パート・アルバイトの変化

パート・アルバイトさんと社員間の関係性も良くなっていると感じています。ベテランのパート・アルバイトさんが社員と対立し「社員なんだから、〇〇してほしい!」という怒りを、感情的にマネージャーにぶつけてくることがこれまでは多々ありました。
しかし、いま振り返ってみて、”そういえば最近なくなったな”と気が付きました。

マネージャー2名のインタビューより抜粋

■チーム全体の変化
各役職の意識がそれぞれ変化したことで、結果的にチーム全体に良い影響が出ていることが理解できます。マネージャーの方々も、「お店の雰囲気全体がなんとなく良くなっていると感じる」と話してくださいました。

この変化は起こるべくして起こっているとも言えます。少し難しい言葉で「フラクタル構造」と言いますが、

・ 組織やチームの上層部の内面・外面で起きていることは、良いことも悪いことも写し鏡のように他の場所でも起きている。
・ 同様に、組織やチーム全体で起きている内面・外面の縮図が、上層部に現れている。

 内面・・・雰囲気・価値観等
※外面・・・意思決定・進め方の特徴、発言量等

という構造の捉え方です。

今回のA店で言うと、マネージャー、チーフ、社員、パート・アルバイトの方それぞれの変容が相互に影響をし合うことで、”なんとなく全体が良くなった”と感じられているということだと考えられます。


また別の店舗では、新たに主体的な動きが起きていました。なんと、Day4で作った”店舗の約束事”をもとに、それを細分化した曼荼羅を自主製作し、店舗の事務所に掲示していたのです!

店舗が自主製作した曼荼羅

こちらの店舗のマネージャーの方にインタビューをしたところ、

「せっかくチームで合意したものや醸成したチームの雰囲気を風化させないことが一番大切だと思った。そのための一つとして作りました。
また、フォーカスを当てる約束事を月ごとに変えて、月1回は店舗内で社員を表彰するようにしています。チームビルディングが終了して半年以上経ちますが、今でも継続しています。」

と仰っていました。チームビルディングをきっかけに、主体性をもってチームに働きかけつづけていることは本当に素晴らしいと感じます。

これらの定量・定性データから見ても、当初会社が目的としていた「社員の皆さんが”この会社にいて良かった”と感じる組織をつくるために、店舗内の関係性の醸成すること」は着実に達成に近づいていると言えるのではないかと思います。

⑤ 効果的なチームビルディングにするための秘訣

上記の事例のように、効果的にチームビルディングのワークを行うためには、どのような点を意識すると良いのでしょうか。
RELATIONSが考える”必ず大事にしていただきたい3つのポイント”についてお話します。

1. コミュニケーションの土台はあるか

これはチームビルディング全体の柱です。コミュニケーションの基本中の基本なのですが、意外と出来ていないのが”ちゃんと伝える・ちゃんと聴く”ということです。
「うまく伝えられない」とはよく言いますが、「うまく聴くことができない」とはなかなか言いませんよね? しかし、お互いのことを理解するためには傾聴が非常に大切なのです。例えば、相手が話をしているときに「私ならこうするのにな…」と考えている時点で、本当の意味で話を聴くことはできていないと捉えられます。
また、聴こうとする姿勢は相手の話しやすさにも大きく影響します。聴いてもらえていると「話しやすいな」と感じますし、聴く側もさらに相手に興味関心を持ちやすくなります。

2. 氷山の下 = 「想いと感情」に目を向けているか

一般的にビジネスシーンにおいては、氷山の上=目に見える事柄を扱うコミュニケーションが主だと思います。しかし、関係性の質を高めるためには、氷山の下=考え・感情・願いに目を向ける必要があります。

氷山モデルとは、ものごとの全体像を捉えるフレームワークです。
水面下にある氷山の下に、多くの本質的な要素が存在すると考えます。

話す側は、”嬉しかった”、“悲しかった”、”悔しかった”など、出来事に感情を乗せて言葉にすることを意識しましょう。想いが乗ることで、相手に伝わるインパクトが変わってきます。
そして聴く側は、相手の感情から伝わってきた”認知”を伝えてあげることを大切にするといいと思います。例えば、「〇〇さんは誠実なんだなということが伝わってきましたよ」など、認知・称賛のコミュニケーションをワークのなかでも積極的にとることを促します。

3.ビジネスライクなコミュニケーションを手放しているか

ビジネスでは、“結論ファースト”でシャープに話すのが良しとされる場面が多いですよね。ましてやネガティブな感情は歓迎されない風潮があるのではないでしょうか。
しかし、チームビルディングの際には、そのビジネスライクなコミュニケーションをあえて手放していただきたいのです。私たちがワークのファシリテーションをするときはいつも、「ゆっくり喋って良いですよ!まとまっていなくても大丈夫」「嫌なことは”嫌!”と言っていいですからね」と皆さんにお伝えしています。
実際に、チームビルディングが始まったばかりのDay1では「研修を受けるのが怖い」「帰りたい」などネガティブな声がかなり出ていました。(笑)そういったマイナスな声も、まずはそのまま聴くことから関係性づくりは始まります。どんな発言も感情もウェルカム!という姿勢で臨むことが大切です。

これら3つのポイントを意識してワークを進めることで、日常業務のなかでも相手や自分の感情を大切に扱いながらコミュニケーションを取る習慣が身についていきます。

⑥ 組織・チームが成長し続けるために。「ファシリテーター育成とチームビルディング内製化」のススメ

チームは生き物のようなものであり、常に変化し続けます。その時々のチームの状態に対して、都度アプローチやフォローをすることで、良いチーム・良い組織はさらに進化します。
そこでRELATIONSが推奨したいのが、少し応用編ではありますが、ファシリテーターを社内で育成し、将来的にはチームビルディングを内製化できるようになることです。実は事例としてご紹介したお客様先でも、人事/採用の社員さんが、RELATIONSのメンバーと一緒にファシリテーターの役割を担っていました。
はじめはハードルが高いと思われるかもしれませんが、中長期的に見ると、会社にとって大きなメリットをもたらすと考えています。

■メリット1:ランニングコストの抑制
人材開発の研修を外部委託しつづける場合、金額もかなり大きな負担となります。ファシリテーターを社員が担うことで、ランニングコストを抑えることにつながります。
また、チームビルディングのファシリテーターが会得するスキルは汎用性が高いため、他の会議・研修の場でも活かせます。
感情を扱うワークなどは、新人研修でもそのまま活用できるものだと思います。

■メリット2:社員のエンゲージメント向上
今回ファシリテーターを担ってくださった社員さんは、全5回のファシリテーションの学びと実践を終えて、今後の”ありたい姿”についてこう語ってくださいました。

チームビルディングで関わった社員たちとのコミュニケーション量は明らかに増えています。
これからは人事/採用の私たちの存在が、”社員にとって安心できる場所”、”心の拠り所”になれるといいなと考えています。もし社員が悩み、うまく感情や課題感を言語化できない状態であっても、「とりあえず話してみようかな。」「あの場所なら、一旦私の感情を受け取ってくれる。肯定的に話を聴いてくれる。」そう感じてもらえるようになるために、今後もファシリテーターのスキルを磨いていきたいです。

ファシリテーターを担った社員へのインタビューより抜粋

社員が自己開示できる場所がチーム以外の場所にもあることで、働きやすさや心理的安全性が高まり、結果的にエンゲージメントの向上につながります。また、人事異動が頻繁にある場合でも、社内のファシリテーターがいれば、新しくチームにジョインした社員に対して随時フォローアップのセッションを実施することが可能になります。
組織やチームで問題が発生した場合にも、社内のファシリテーターであれば日常のなかで課題を察知し、早期に解決策を講じやすくなると思います。

⑦最高のチームをつくるお手伝い、お任せください

RELATIONSは『会社に生命力を』というパーパスを掲げ、コスト最適化や組織活性化の事業を展開しています。社員一人ひとりが可能性を開花させ、いきいきと働くことのできる会社を増やしたいと心から願って伴走支援をしています。

皆さんの会社で”最高のチーム”をつくることができるよう、ぜひ私たちの実践知を活用いただければと思います。課題感が明確に見えていない場合でもウェルカム!です。お気軽にご相談ください。

(執筆:RELATIONS広報  斉藤 里菜 / 協力:RELATIONS組織活性化コンサルタント兼チームビルディングデザイナー 野口 祐介)