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代表の思想と業務特性の合致が鍵!遠隔地居住制度から考える制度策定のポイント

みなさんこんにちは。RELATIONSの広木です。
コロナ禍により、リモートワークが推奨される動きが増えてきました。毎日出社する必要性がなくなるため、環境の自由度が上がり、「住む場所の自由度」も上がってきます。
そのような世の中の流れに伴い、「遠隔地居住」の制度が注目を浴びています。弊社RELATIONSでも「社員一人ひとりが豊かで、その人らしい人生を過ごすこと」を目的に、遠隔地居住制度を2022年1月から制度化しました。

この記事では、制度化の経緯や実際の利用者が感じていることなど、リアルな実情をお届けできればと思っております!

制度化のきっかけ・プロセス

■制度化のきっかけ

RELATIONSはリモートワークやお客様先への出張業務が中心のため、オフィスを構えているものの、実際に東京のオフィスを利用しているのは数人程度・・・といった現状がありました。

WeWorkへ移転する話や、オフラインで集まる意義が会社で議論されていた中、社員の住む場所についても一度見直してみてもいいのではないか、となったのがきっかけでした。

■制度化へのプロセス

プロセス① プロジェクトメンバーの構成について | 関心がある社員から当事者へバトンパス

RELATIONSではしばしばプロジェクトのメンバーを手挙げ制で募ります。
この遠隔地居住のプロジェクトも多くの社員が手を挙げ、9名で初期のプロジェクトメンバーが構成されました。プロジェクトを前に進めていこうとしましたが、プロジェクトメンバーが集まり話している中で感じたことは、「実際に制度を使う人たちが、制度を作っていくのが自然なのではないか?」ということでした。

一見、ドライに聞こえるかもしれません。
ただ、制度化に向けて動こうとしていたメンバーは実際に遠隔地居住に対してリアルなテンションを持っている当事者ではないため詳細を決めることができませんでした。

弊社はホラクラシー®(自律型組織)で組織運営をしています。

ホラクラシー®では「テンションドリブン」であることを重視します。理想と現実のギャップをテンションと呼び、このテンションに基づいて課題を整理し、提案を行い、問題を解決していきます。
またテンションから生まれた提案の採決は「有効な反論がなければ、まずはやってみる」という考え方であるため、まず運用を開始してみて、運用後にテンションを感じた人がいれば都度解決をしていきます。

こうした背景もあり、遠隔地居住についてテンションを持つ当事者が、会社のパーパスとの接続や現在のRELATIONSとの方向性の合致等、さまざまな要因を考慮し、ルールを決めるというやり方がいいのではないかと感じ、制度作りを進めました。

プロセス② 当事者がたたき台を作り、各専門領域の観点を加えて制度化へ

実際に制度を使う予定であるメンバーが制度の叩き案を作り、代表の長谷川の思想との合致、労務・経理的な観点などさまざまなものを統合し、制度化しました。

代表・長谷川の葛藤

代表の長谷川は、オンラインでのコミュニケーションが主となり、オフィスで偶発的に顔をあわせることがなくなっていたRELATIONSにとって、社員が遠隔地に居住することは必ずしもメリットだけであるという捉え方ができなかった、と話しています。
これまでは固有のオフィスを持ち、各地の出張先からオフィスに戻ってくる、いわば「ホーム」となる場所がありました。
ホームとなる場所はあるものの、一部の社員はそのホームから遠ざかるということには大きな抵抗がありました。
その後、長谷川は、「合宿と全社会議」を対面型で実施することが担保できれば”挑戦してみてもよい”という考え方になったといいます。遠隔地に社員が住んでいても、関係性を耕していく”ハイブリットワーク”へのトライとして、前向きな捉え方ができるようになり、意思決定に至りました。

代表・長谷川の思想

遠隔地居住制度には「会社に関わる人が躍動し、心から人生を楽しむ世界をつくりたい」という代表・長谷川の思想が反映されています。

具体的には以下の3つが実現できている世界を掲げています。
・組織、個人の「パーパス」がともに響き合っている状態
・素直な自分でいられる状態
・人生(仕事・家族)を自ら主体的に歩んでいる状態

また、長谷川は、
「らしさの追求」が第一義。「どこで過ごすか」「誰と過ごすか」は人生の幸福度において高い影響力を持つ要素であり、家族や繋がりのあるコミュニティからみても”ええ会社”になる。
と話しています。

長谷川の思想からも垣間見えるように、遠隔地居住制度は「遠隔地」ではなく「らしさを追求できる場所」に住むことを会社がサポートする制度であり、「一人ひとりがこの人生は最高だったと思える」ための制度であるといえます。

実際の制度内容

まずは簡単に、制度の概要と現在の活用状況についてご紹介します。

〈制度概要〉
・居住地は国内全域が対象
・支給額
交通費:エリア毎設定単価×回数
宿泊費:10,000円×回数
・全社員集合のオフライン会議への参加は義務。
※月1回の全社会議、年2回の全社合宿を行っています。

・社内の役割や案件の割り振りに関して優遇はしないため、移動負担等を各自十分に検討した上での利用を推奨。詳細の内容は弊社HPに記載をしています。

実際に遠隔地居住制度を利用している人の意見や所感はどうなのか?

RELATIONSでは、社員の約13%が遠隔地居住制度を利用しています。
本社は東京にありますが、九州や四国、関西に住んでいる社員がいます。
その遠隔地居住制度を利用している社員にアンケートをとってみました! 

対象社員
Aさん:40代。福岡県在住。奥さんと子供との4人暮らし。RELATIONS創業期から在籍。
Bさん:30代。香川県在住。奥さんと子供との4人暮らし。RELATIONS5年目のコンサルタント。
Cさん:30代。兵庫県在住。奥さんと子供との3人暮らし。RELATIONS4年目のコンサルタント。
Dさん:20代。兵庫県在住。独身。新卒でRELATIONSに入った3年目のコンサルタント。

Q.遠隔地に居住を決めた理由・きっかけを教えて下さい
・家族の希望や家庭の事情
・金銭面、工数面の負担軽減
・各地への移動のしやすさ
・全社で集まる機会がある
・地元の友人関係
 
Q.遠隔地居住制度のメリットを教えてください。
・出張が多く1人になりがちだった妻と子供と実家が近くなり精神的に安定した
・家族や学生時代の友人関係をより大切にでき、会う機会が増えた
・公私のバランスが良くなり、一緒に寝てる時、ご飯食べている時、公園でサッカーしている時など、いま幸せだなーと思う瞬間が増えた
・5年前に移住してから制度を利用するまでは交通費、東京の家賃と出費が多かったが、そこがなくなった
 
Q.遠隔地居住のデメリットを教えてください。
・現状の制度で満足しているため、デメリットはありません。

制度利用者にとって、とても満足できる制度であることが伺えます。

遠隔地居住制度への不満の声は0ではない・・・

制度利用者にとっては素晴らしい制度であったことが伺えますが、会社全体で使用しているのはわずか13%ほどです。
現時点でもさまざまな事情のために東京近郊で暮らさざるを得ない社員は存在しており、社員からはこのような声があります。

・遠隔地居住者とオフィスに集まり相談をすることが物理的に難しく、日程が合わない
・個人のことを会社がどこまで負担するのかという課題がある
・東京に比べ地方は物価や土地の面が安いが、近郊居住者への手当や福利厚生はなく、不平等感を感じる

どの意見も真っ当な意見です。
なにか社内で新規に制度を設計する際、全員が利用しない制度においては、利用しない側への配慮から”公平性を担保すること”について、一度は考えることになります。この点については、組織の規模や企業文化が大きく影響する部分になり、実際のところは明瞭な解はありません。
ただ、オフィス近郊の居住者が感じる課題(不満感等)は、別途、提案してもらい協議していこうというメッセージを社内に伝えていったという流れがあります。
テンションを感じた当人と対話を重ね、現時点での最適解を出し、最適解をアップデートさせていくことで少しずつ理想の制度に近づくことができると信じています。

まとめ:代表の世界観と企業の業務特性を組み合わせた制度設計を

全ての企業にとって、遠隔地居住制度が有効かどうかというのはわかりません。

制度を考える際に必要な視点としては、
・代表の思想との合致
・企業の業務特性
この2点に留意する必要性があると思います。

前提としてRELATIONSの場合は、
・「らしさの追求」を第一義としていること
・「どこで過ごすか」「誰と過ごすか」は人生の幸福度において高い影響力を持つ要素であり、家族やつながりのあるコミュニティからみても”ええ会社”になることを目指していること

この2つが代表の長谷川の思想にはあります。

また、業務特性上としては、
・社員全員がフルリモートかつ、コンサルタントは各地へ出張が多く、居住地によってコミュニケーションの質に差が出にくいこと

加えて、制度設計時に、
・フルリモートワークという形態を既に採用していたことから、コミュニケーションの量と質については、別で議論がなされていて、「対話文化」を徹底的に取り入れてきたこと
・オフサイトでの合宿や全社会議については、遠隔地居住制度とは違う文脈で、制度化されてきたこと
という背景があり、実現可能となった制度といえます。

制度設計において前提として考えるべきは、”決してひとつの事象だけでは課題を解決できない”ということです。
制度を導入する上で、組織のあり方や、組織内でのコミュニケーション・文化まで見直すことで、ひとつの道がひらかれていく可能性があります。

RELATIONSでは、「会社に生命力を」というパーパス実現に向けて、自社を実験場に、様々な組織の取り組みを行っています。気になる方は、ぜひ以下のようなイベントも覗いてみてください。