裏側ドキュメンタリー 「制度設計 3つの考え方」〜”働く場所の自由”を実現するためには?〜
こんにちは、RELATIONSの広報です。
コロナ禍でリモートワークを導入する企業が増え「働く場所の自由」について、改めて検討する企業も増えたのではないかと思います。
Works Human Intelligenc の調査によると、2021年コロナ禍において、64法人中、約7割の法人が本社から離れた遠隔地への居住を認めているという結果*があります。一方、既存の各種制度との兼ね合いから、うまく推進できなかったという企業もあり、導入した企業においても、その大半が条件付きで遠隔地の居住を認める風潮や、そのことにより、社員の自己負担分が増えているという現状も露呈しているようです。
*Works Human Intelligenc の統合人事システム「COMPANY」のユーザー法人を対象に実施した「自己都合で遠隔地に居住する従業員の通勤や転勤の扱い」に関する調査(調査期間:2021年8月25日~9月24日)の結果
RELATIONSでは、2022年1月から「遠隔地居住制度」を導入し、現在も運用を続けています。
本記事では、当社が「働く場所の自由」を叶えるために、どのように社内で協議し実現されていったのか、制度設計の裏側についてお伝えします。また、制度設計を進める上での考え方のポイントについてもまとめています。
RELATIONSの「遠隔地居住制度」とは
RELATIONSの「遠隔地居住制度」のルールは、以下のようになっています。(重要な点を抜粋し、一部、公開します。)
制度のはじまり/ 福岡から関わる社員をモデルにして
フルリモートワークから、居住の自由について考え始める
この制度が始まったのは2022年1月。検討が始まったのは、2021年9月でした。実は、それ以前から社内には、家庭の事情で福岡県に居住しながら東京のオフィスや全国の顧客へ出向く社員がいて、その社員のケースをモデルに制度の検討が始まりました。当時、RELATIONSでは本社ビルを撤廃してフルリモートに移行しており、比較的、居住の自由が叶いやすい状況になっていました。
モデルとなった社員からは、「休日に自然と触れ合う時間が増えた」ことや、「家族との時間をとりやすくなった」ことを踏まえて”らしさを追求できる”という声があがっていました。
RELATIONSの根底にある思想「らしさ」の追求が後押し
RELATIONSの代表である長谷川は、以下のような考えをもっています。
加えて副次的に、先進的な制度設計とすることで、顧客から興味を持って頂けることや、良い人材が集まってくるメリットが考えられるため、制度を推し進める運びとなりました。
しかし、代表の長谷川が制度設計時に抱えていた感情のなかには「恐れ」もあったと語っています。
全国に社員が分散すると、社内の関係性が希薄になる恐怖
オンラインでのコミュニケーションが主となり、オフィスで偶発的に顔をあわせることがなくなっていたRELATIONS。長谷川は、社員が遠隔地に居住することが、必ずしも”メリットしかない”という捉え方はできなかったといいます。
当時、制度の協議を行っていた議事録には、以下のようなやりとりがあります。
(※ 社員Aは創業メンバーの一人であり、本制度の設計における主担当者)
その後、長谷川は、「合宿と全社会議」を対面型で実施することが担保できれば”挑戦してみてもよい”という考え方になったといいます。遠隔地に社員が住んでいても、関係性はしっかりと耕していくという”ハイブリットワーク”へのトライとして、前向きな捉え方ができるようになり、意思決定に至りました。
制度の設計の苦悩 /「不平等感やイレギュラー」への対応
制度を利用しない人の不平等感についてどう考えるか?
なにか社内で新規に制度を設計する際、全員が利用しない制度においては、利用しない側への配慮から”公平性を担保すること”について、一度は考えることになります。この点については、組織の規模や企業文化が大きく影響する部分になり、実際のところは明瞭な解はありません。
この点について、RELATIONSでは以下のような考え方を示しました。
前提として、RELATIONSの文化には「その課題にテンションがある者が”ソース役”(はじめる人)となり、課題解決に向けて動く」というものがあります。
そのため、オフィス近郊の居住者が感じる課題(不満感等)は、別途、必要であれば提案してもらい協議していこうというメッセージを社内に伝えていったという流れがあります。
交通費の上限はいくらまでが妥当か?最適解は「個別対応」
協議の初期から課題になっていたのは、交通費の補助上限についてでした。RELATIONSの場合、コンサルタントであれば、居住した地域から全国に出張する場合などもあり、ケース別に考えると多様なルールが必要になってきます。結果、最低限の運用ルールのみ定め、該当者において個別対応でルールを設定していく、という方針になり、小規模な会社ならではの解決策に至りました。
制度の利用者の満足度は高い。その理由はフルリモートが肝。
現在、制度の利用者は、4名で、社員比率でいうと13%です。
決して多くはない利用者ではありますが、制度を利用している社員の満足度は高く、大きな改善すべき点も出てきていないのが現状です。このような満足度につながっている理由の一番は、狙っていた「らしさの追求」が叶い、家族や地域での過ごし方で、生活の質があがっているというのがあげられます。加えて、代表が不安視していた「コミュニケーション」については、以下の2点から現状、大きな課題とならず、うまく運用できていると考えられます。
結論 / 遠隔地居住制度を設計する上での3つの考え方
「遠隔地居住制度」を企業で導入する場合、自社での経験から、以下のような考え方をもって設計すると良いと考えられます。
上記の考え方を前提として、この制度がうまく取り入れられた理由にはRELATIONSの組織文化も大きく影響していると感じます。
RELATIONSは組織運営方法としてホラクラシー®を導入していて、社員ひとりひとりが、感じている課題や考えを「主体」として実行に移しやすい企業文化があります。
そのことに加え、フルリモートワークという形態を採用していたことから、コミュニケーションの量と質については、別で議論がなされていて、「対話文化」を徹底的に取り入れてきたという背景があります。オフサイトでの合宿や全社会議については、遠隔地居住制度とは違う文脈で、制度化されてきました。
このようなことから、うまく遠隔地居住制度が成立しているRELATIONS。
制度設計において前提として考えるべきは、”決してひとつの事象だけでは課題を解決できない”ということです。制度を導入する上で、組織のあり方や、組織内でのコミュニケーション・文化まで見直すことで、一つの道がひらけていく可能性があります。
RELATIONSでは、「会社に生命力を」というパーパスの実現に向けて、自社を実験場と見立て、さまざまな組織づくりの取り組みを行っています。一般の方も参加できる公開イベントもございますので、気になる方はぜひPeatixも覗いてみてください。
(執筆:RELATIONSパートナー 川口 塔子)